- 連載 -
第2回 「USJと、ほんまの大阪商人センス」
小山美穂
 記念すべき連載第1回目に挿入されてた写真を見て、私、思わず苦笑しました。大阪名物は「たこ焼」やて、みんな思てはるねんもん(その代わりBGMが洒落てたから、 編集者さんのバランス感覚には感激しましたけどね)。言うたら悪いですけど、たこ焼は、どっかの人が最近になって作りはったイメージやと思います。けど、「ほんなら他に何あるねん?」て聞かれても、正直言うてあんまりパッとしたもん、思いつきませんでした。

 それがこの春、ついに誕生! 大阪市此花区に完成した世界最高級のムービーテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」です。米・ハリウッドとフロリダにあるユニバーサル・スタジオの海外進出第1号で、1700億円もかけた巨大施設です。

 3月末のオープンに先駆けて、プレビューに招待されて行って来た人に聞いたら、流石はスピルバーグ監督が創作顧問しはっただけに、『ジュラシックパーク』や『ET』のアトラクションは迫力満点、バーチャルの宇宙の旅を体験できるスタジオもあって、普通のテーマパークと違うて、40代・50代のビジネスマンも心から楽しめるねんてぇ!!

 それだけとちゃうねんよ。USJの近くには、世界に人材を送り出せるような高度なCGを教える学校を作ろ、て提案してる財界人もいたはるし、USJを核に、これからいろんな町づくりの可能性が広がっていくみたいです。

 長い不況に苦しんできた大阪のホテル業界は今、「USJに足を向けて寝られまへんなぁ」て、えらい活気づいてます。けど気になるのは、ホテルに限らず、マスコミも何もかも、USJの経済波及効果とか雇用の創出とか、目先の儲けの話ばっかりしてはること。

 大阪の堂島では1730年頃に世界最初の先物市場を作り、お米の先物取引が始まりました。それが100年後のシカゴの先物市場のモデルになったほど、昔の大阪商人はずっと先を見通すビジネスセンス、船場言葉でいう「才覚」があったはずです。「水の都」と呼ばれるほど整備された港や河川、運河の舟運を利用して、大阪が「天下の台所」として栄えていたことは、小学校の社会科でも習いますよね。それが、明治以降、経済の中心が東京に移った上、特にここ10数年は不況の影響をまともに受けたせいか、今の大阪は活気と一緒に優れた才覚まで失うてしもたんかなぁ。

 けど水に親しんで発展してきた大阪、ならではの発想は今なお健在やと思う。赤字とか地盤沈下でボロクソ言われてる関西空港も、海外のお客さんからは「便利で美しく、エコロジカルな海上空港」と賞賛されてるし、海上オリンピックをコンセプトに作った人工島の舞洲・夢洲を始め、世界レベルの水族館「海遊館」、ベイエリアや川辺の整備、観光プランも官民挙げて、次々と更にええもんが出来つつあります。スポーツ施設も充実してるし、「食いだおれ」やから食べ物が美味しいのは当り前。2008年の大阪オリンピックが実現して、世界中から人が集まって来はっても、きっと喜んでもらえる自信、ありますよぉ。

 そやからUSJができても私が一番楽しみにしてるのは、日本中、いやアジアも含めて海外からも大勢、遊びに来て、大阪のぬくもりを肌で感じてくれはること。よそからのお客さんらが素敵な町やと実感してくれはるようになったら、焦らんでも人やお金は自然に集まってくるもんやと思います。大阪は商いの町やから「がめつい」と思われがちやけど、ほんまは、外から来る人を大らかに、温かく迎え入れる「ホスピタリティ」に溢れるひとばっかりですよ。ちょっと口は下手やけどね。

 ところで、ディズニーランドは千葉にあっても「東京」ディズニーランドて言うのに、大阪にあるユニバーサル・スタジオが何で「ジャパン」なんかご存知ですか。
 「大阪」のイメージが良くないからやろ、て、またそんなこと言う人がいてはるけど、実は別の説があるんです。

 「ユニバーサル・スタジオ・オオサカ」にしたら、略称は「USO」でしょ。「ウソ」やったら困るもんね。
(April 2001)

戻る