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第4回 「奮闘! 大阪モードの仕掛け人たち」 =下=
小山美穂
 皆さんこんにちは。浪花のファッション・リポーター、小山美穂です。今日は「2001/2002秋冬大阪コレクション」の模様を、大阪市中央区・大阪ビジネスパークにあるMIDシアターから実況でお伝えします。
 初日は、地元開催のスポーツの祭典「東アジア競技大会2001 OSAKA」を記念して、大会参加国から日本・韓国・中国・オーストラリアを代表する若手のデザイナーさんがジョイントで作品を発表します。

 顔ぶれをご紹介しますと、ここ大阪からは大川貴史さんと上野欣也さん、来年のワールドカップ・サッカーで開幕戦が行われるソウルからは李寶美(イ・ボミ)さん、そして昨年五輪の開かれたシドニーからは二コラ・フェネッテイさん。
 大コレ開幕を飾るショーやから、うゎ〜、新聞社やテレビ各局のカメラがびっしり並んでて壮観やわぁ。

 いてはるいてはる…オーストラリア総領事のグレッグ・ストーリーさんや、韓国総領事館の方々も同胞の応援に駆けつけてはります。大コレは一般市民にもオープンなんが魅力やから、観客席はゴージャスに着飾った地元のご婦人やお洒落な若者で一杯。経済界のお歴々や、テレビでも見かけるタレントさんらの方がかすんでしまうぐらいの熱気です。これが、まぜこぜの「ごった煮」状態ていうもんやろねぇ。

 ロビーに目を移したら…まぁ、すいやりした(=スマートな)コンパニオンさん、お辞儀ひとつでも身のこなしがちゃうわ。それから、きっちりネクタイ締めたお役人風の人らが、手際よく観客整理や切符切りしてはります。あっ、入場券忘れて困ってる学生に、受付のおねえさんが「しゃぁないなぁ、今度から気ぃつけや」言うて入れたげはった。あんなん、かめへんの? ほんま、どこ見渡しても大阪の人間味に溢れるイベントていう感じ…。

 2回目のジョイント・ショーには、大阪の森本真一さん、ソウルの金光洙(キム・クァンス)さん、それから北京から張瑛(チョウ・エイ)さんが参加。2つのショーの共通点は、黒が目立つことでした。今シーズンはパリやミラノでも黒が多く、「アメリカの景気失速への懸念か」ていう報道もあったそうですけど、大コレは流行発信ていうより、むしろそれぞれが個性を存分に発揮する場。今ぐらい情報が豊富な時代に、大阪が世界の新作情報を流してもしゃあないですもんね。
 それが証拠に、6人とも「トレンドに関係なく、本当に個性的なお洒落を楽しむ人のための服を提案する」と異口同音に話してはりました。それがたまたま若い人の感性で黒になったんでしょね。ただそんな中で、張瑛さんの作品はチャイナドレスと新しいデザインを融合させた鮮やかな色使いが印象的でした。前に、堺屋太一さんが「大阪はアジアの体臭が漂う集客都市」て言うてはったけど、まさにそういう多様な文化のエネルギー、感じました。

Asia Pacific Joint A
ニコラ フェネッティー
 あ、楽屋にシドニーの二コラさんが…よっしゃ〜、突撃インタビュー!小山:「ショーの手応えは?」 ニコラ:「運営のシステムがきちんとしていて、驚くほどスムーズにショーが出来たし、お客さんの反応もよかった」 小山:「初めて大阪に来られた印象は?」 ニコラ:「ニューヨークのような人なつっこさを感じるね。それに関西空港も、町並も、建物も立派で、町全体がクリーンだ。シドニー五輪の経験から判断すると、2008年のオリンピックはパリでも北京でもなく、大阪に決まりだよ」
小山:(内心、不安やけど)「ホンマニ〜? サンキュー、ニコラ。アイ・ラヴ・ユー!!」

 さて2日目は、これまでの大コレ新人部門でデビューした京都の秋田秀樹さん、東京の石井康之さん、そして兵庫の田川朋子さん、の実力派若手3人によるジョイント・ショーに、地元のベテラン、いづみみちこさんの新作発表。中でも田川さんは、無難にまとめよとしてた去年11月と違うて、赤や黄色、緑などの思い切った原色を使った今回の作品に自信が感じられます。この大コレから、また新たなスターが生まれそうな予感…。それから、いづみさん。彼女には熱狂的なファンが多いから、もうその熱気だけで押し倒されそうです。いづみさんの大好きなカサブランカの香りが会場一杯に広がって、大コレもいよいよクライマックスに。

 最終日の取りはやっぱり大コレのリーダー、コシノヒロコさんのコレクション。絵柄を浮き出させる特殊加工でドレスに花鳥風月を描いたり、折り紙のように立体的な服など、流行を超越した独特の風格を漂わせる100点あまりの作品に、観客はみんな、うっとり。コシノさんのデザインは、洗練された美しさの中にも、どこか遊び心というか、お客さんへのサービス精神が入ってるのが人気の秘密やろな、と思います。ショーの最中、後ろで立ち見をしてる私に「ここから、全然見えへんねぇ…」とささやく声。振り向いたらなんとコシノさんご本人。慌てて脇に寄ると「私はええねん。立ってはるお客さんが気の毒やと思て」とニコニコ。ほんまに気さくな大阪人です。

 これで大コレの全日程が終了しました。お客さんたちの表情をお伝えしましょう。ショーの前は会場入りするのも、皆さん、おずおず、バタバタしてはりました。それが、175cm以上もあるモデルさんたちが、美しい衣装をまとって華麗に歩く姿を堪能した後では、瞳はキラキラ、背筋をピンと伸ばして、なぜか一様にモデルウォーキングで、颯爽と会場を後にされています。

 大阪のファッションは派手でケバケバしいとか、大阪は文化不毛の地やとか、いろんなご批判をいただきますが、ここ、大コレの会場は、美しいものには素直に感動し、上手にお洒落を楽しめる人たちでほんまに賑わっていました。大阪は、誰もがファッションを身近に楽しめる素敵な町です。11月に開かれる次回、「2002年春夏大阪コレクション」は、ヨーロッパからもデザイナーが参加するなど、さらに規模を拡大して行われる予定です。
 以上、大コレの現場から小山がお伝えしました。  
(June 2001)
〔写真c:大阪コレクション開催委員会〕

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