目次 

第1回 知事の土俵入り、待った!

第2回 USJと、ほんまの大阪商人センス

第3回 奮闘! 大阪モードの仕掛け人たち =上=

第4回 奮闘! 大阪モードの仕掛け人たち =下=

第5回 大阪は、こけてもただで起きひんでぇ!!

第6回 ストレスためんと、お金ためましょ!

第7回 『浪速の"いとはん"人情物語』[上]

第8回 『浪速の"いとはん"人情物語』[中]

第9回 『浪速の"いとはん"人情物語』[下の(1)]

第10回 『浪速の"いとはん"人情物語』[下の(2)]

第11回 新春恒例!女たちの”大阪・冬の陣”

第12回 夕陽に向かって涙した青春

第13回 みにくいアヒルの子

第14回 美穂の”九死に一生”事件ファイル

第15回 夏の日のおもいで

第16回 小春はん (その一)

第17回 小春はん (その二)

第18回 小春はん (その三)

第19回 小春はん (その四)

第20回 小春はん (その五)

第21回 小春はん (完結編)

第22回 浪花の“第九”はスケールがちゃう!

第23回 2003春夏大阪コレクションリポート

第24回 涙の胃カメラ物語

第25回 ああ審査員

第26回 縁は異なもの、宝物

第27回 男のロマン?

第28回 (その2) あんさん何者でんねん?

第29回 (その3)親バカならぬ"上司バカ"

第30回 (その4)英語やったら任せなさ〜い

第31回 (その5)愛される人になるんだ

第32回 (その6)社長さんのお友達

第33回 (その7)社長の寂しげな笑み

第34回 (その8)マザコン、半端やないよ

第35回 (その9)こんな社長でんねん

第36回 (その10)同志の関係

第37回 (その11)そんなん、嘘や!

第38回 完結編 私、幸せやったわぁ

第3回  「奮闘! 大阪モードの仕掛け人たち」 =上=
小山美穂
 大阪の春の風物詩を独断と偏見で選ぶなら、「大阪コレクション」。え?「ツボとか掛け軸なんかのお宝収集することか」て? ちゃうちゃう、ファッションの方のコレクション。
「へぇ、そうかいな。けど、よりによって、なんで小山がファッションの話なんか…?」て、イメージのギャップに驚いてはるんでしょ。失礼やねぇ。何を隠そうこの私は、初回から足かけ15年、いっぺんも欠かさんと通い続けてる大阪コレクション、略して大コレの「生き地獄」・・・やないわ、「生き字引」なんですよぉ!

つい先日、その2001/2002秋冬ものコレクションが開催されました。で、今日から2回、小山ならではの「大コレ」潜入リポートをお送りします。デザイナーへの突撃インタビューもあるし、いつもと雰囲気ちゃうよ。ほな、ちょっと気取って始めまっせ〜!

世界の5大コレクションをご存知ですか。パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、そして東京で、世界のデザイナーが春と秋の年2回、主にショー形式でジャーナリストやバイヤーを対象にプレタポルテ(既製服)の新作を発表するもので、それが次シーズンの世界のファッション・トレンドをリードしていきます。大阪コレクションも基本的にはその流れですけど、ショーの内容や運営方法なんかに、独自の大阪流が生きてます。

 大コレの主催者は、在阪の行政・経済団体が構成する「大阪コレクション開催委員会」。1987年秋に年1回開催でスタートしたこのイベントも、今では4月に「秋冬もの」、11月に「春夏もの」を発表する関西最大の、恒例ファッション事業としてすっかり定着しました。「そんなん、聞いたことないでぇ」とおっしゃる方も、コレクション提唱者で、日本のファッション界のリーダー的存在であるデザイナーのひとり、コシノヒロコさんのお名前ぐらいはお聞きになったことがあるでしょ? そう、大阪・岸和田市出身で、ヒロコ・ジュンコ・ミチコのデザイナー3姉妹の長女です。

ジュンコさんは東京に、ミチコさんはロンドンにそれぞれ製作拠点を移してはりますけど、ヒロコさんは今でも東京と大阪の両方にオフィスを構え、特にデザインの構想は関西で練らはることが多いそうです。「大阪の人はお金を大事にして、良いものをきちんと見分ける目を持っている。そういう大阪人気質の良い面を作品に活かすことが私の個性にもなった」として、地元大阪には人一倍愛着を持ってはる方です。

 そもそも大阪コレクションができたのも、こんなコシノヒロコさんの一言がきっかけでした。「大阪にも若くて才能のあるデザイナーはたくさんいるが、世に認めてもらおうにも発表の場がない。何とか、皆さんのご協力をいただけないだろうか」。これを聞いた某企業経営者と2人の財界ジャーナリスト、みんな「大阪の発展のためやったら、命を賭けても惜しいことないで〜」ていう人らで、早速、当時の大阪商工会議所の会頭やった故・佐治敬三さん(当時サントリー社長)のところに相談を持ちかけました。

「それはおもろい。やってみなはれ」の一言で話は進み、「大阪で、世界の桧舞台で活躍できるファッション・デザイナーを発掘・育成する場作り」プラス「独自のファッション情報発信による大阪の繊維産業の再活性化」、この2点を主眼とする大コレが誕生した訳です。なんや、人情味のある、感動的な話やと思わはりません?

 大コレが他のコレクションと最も異なる点は、入場券さえ買うたら、誰でも気軽に最新モードを楽しめることです。よくワイドショーなどで、東コレや海外ブランドのショーを見に来た女優さんの着飾った姿が紹介されるように、普通のコレクションは招待客オンリーで、一般の人は見られません。これに対して、大コレが市民にオープンな理由は、行政がバックアップしてることもありますが、実は、事業資金の不足分をチケット収入で賄おうという運営側の苦肉の策やったそうです。商人の町、大阪らしいアイデアでしょ?

けど、そのお蔭で私のようなリピーターも増え、ファッション文化が一般市民の中に徐々に浸透しつつあります。もっとありがたいのは、授業で見学に来たファッション専門学校の生徒さんが、今度は自分がその舞台に立つことを夢見て更に勉強し、実際に新人デザイナーとして大コレでデビューを飾る、こんなケースも少なくないことです。聞くところによれば、大コレには毎回、関西はもとより、名古屋や北海道、九州からもデザイナーの卵たちが大勢見学に訪れているそうです。


 もう少し踏み込んだ例を挙げると、大コレはコシノさんのような著名デザイナーのショー以外に、11月には全国から公募選考された若手デザイナーが、モデル代も含めて一切の費用なしで出品できるステージを設けてはります。応募資格は「1年以上、責任あるブランドを持って活動してきたデザイナー」の一点だけ、出身地は問いません。地元大阪のありがたい税金を投下した事業やのに、国内外を問わず、誰でも能力さえあれば均等にデビューの機会を与えてるて、大阪行政もなかなか懐の深いとこがあると思わはりませんか? それだけに、厳しい選考をパスした将来性ある若手が集まって、個性とエネルギーを競います。この新人ステージ、今では東京からもジャーナリストやバイヤーが駆けつけるほどの「目玉商品」。これをきっかけに、世界に羽ばたくデザイナーも多いんです。

 例えば、若者のカリスマ・ブランド、「20471120」の中川正博さんとLicaさんの2人組もこの新人ステージ出身です。彼らは東コレ初参加の際も、入場券を販売する「大阪商法」を何の疑問もなく持ち込み、その後、木下サーカスとジョイントしたり、北極でイヌイットの女の子に服を作ったり、最近ではお客さんから預かった古着を全く別のものに蘇らせる「リサイクル・コレクション」を発表するなど、相変わらず奇抜なアイデアで、みんなを楽しませてはります。また、今ではむしろ映画や音楽のジャンルで活躍する「Beauty;Beast」の山下隆生さんも、大コレ出身のパリコレ組。

 こうした個性たっぷりの新人デザイナーをようけ輩出してきた大コレ、もちろん他にも見所一杯・・・ということで次回は、実際の大コレ会場からショーの模様などを、中継で、熱気たっぷりにお伝えいたします。どうぞお楽しみに。
(May 2001)
〔写真c:大阪コレクション開催委員会〕

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